大判例

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仙台高等裁判所 昭和28年(ネ)267号 判決

本件控訴が控訴期間の点につき適法であるかどうかにつき審案するに、記録に徴すると、原判決(福島地方裁判所昭和二十七年(ワ)第七五号事件判決)正本は昭和二十八年六月二十九日控訴人に送達されたところ、控訴代理人は同年七月十日当裁判所宛の本件控訴状を仙台地方裁判所に提出し、同裁判所は右控訴状を同年八月十八日当裁判所に廻送し、同日当裁判所においてこれを受理したものであることが認められる。これによると、本件控訴状は原判決正本の送達された昭和二十八年六月二十九日の翌日から起算して二週間の控訴期間(最終日は同年七月十三日)内である同年七月十日提出されたが、提出場所を誤つたため結局右控訴期間を経過した後である同年八月十八日に至つて当裁判所に受理されたものであることが明である。

控訴の提起は、控訴状を原裁判所又は控訴裁判所に提出してこれをなすべきものであるが、控訴代理人は本件控訴状を原裁判所たる福島地方裁判所でもなく、控訴裁判所たる当裁判所でもない仙台地方裁判所に提出したのであるから、一見すると右控訴期間の経過は控訴代理人の責に帰すべき事由によつて生じたもののように見える。しかし仙台地方裁判所は本件控訴裁判所たる当裁判所と同一の建物内にあつて、その各受付口は単に窓口を異にするのみであるから、極めて少い場合であるとしても相当注意したつもりであるにかかわらずその窓口を取違えることが必ずしも絶無であることを保し難い。のみならず本件控訴が前示のように福島地方裁判所の判決に対し当裁判所に控訴するものであることは本件控訴状の記載によつて明瞭にこれを知り得るところであるから、仙台地方裁判所の受附係がこの点に注意を払わず漫然これを受理し、しかも当時なお控訴期間が三日残存していたにかかわらずそのままこれを徒過しその後これを当裁判所に廻送したところに問題がある。即ち、仙台地方裁判所の受付係は控訴代理人から本件控訴状を提出された際、控訴状の記載を調査しこれを受理すべからざるものとしてその旨を遅滞なく控訴代理人に通知すべきであつて、これをしなかつたために控訴代理人において期間内に当裁判所に本件控訴状を提出することができなかつた事情も看取し得ないことはないのである。民事訴訟法第百五十九条によると、当事者がその責に帰すべからざる事由により不変期間を遵守することができなかつた場合においてはその事由の止んだ後一週間内に限り懈怠した訴訟行為を追完し得る旨定めているが、右にいう責に帰すべからざる事由とは当事者が訴訟を追行する上に通常用うる程度の注意を払つてもなお避け得なかつた事由をいうのであつて、客観的不可抗力の場合のみに限るものでなく、具体的場合に当り当事者の立場を十分斟酌してこれを定むべきものと解するを相当とする。前示の事情に当事者の弁論の趣旨を併せ考えると、本件において控訴代理人が控訴期間を遵守することができなかつたのは、単純に控訴代理人が訴訟追行に当つて通常用うべき注意を怠つたによるものとは、にわかに断ずるを得ないのであり、むしろ仙台地方裁判所の受付係が当然尽すべき注意を怠つたことによる事情を認めざるを得ないのであつて、これを要するに本件控訴期間の不遵守についてはこれをにわかに控訴代理人の責に帰せしめることはできないものというべきである。

果して然らば、本件控訴期間を遵守し得なかつた事由は、本件控訴状が仙台地方裁判所から当裁判所に廻送されたことによりその事由が止んだものというべく、これと同時に本件控訴状は当裁判所に受理されたのであるからこれによつて懈怠した訴訟行為は適法に追完されたものというべきである。よつて本件控訴は控訴期間の点について結局適法であると認める。

以上により本件控訴が結局控訴期間懈怠による不適法なものとしてその却下を求める被控訴人の本件本案前の抗弁はこれを失当として却下すべきである。よつてこの点の争につき中間判決をすること主文のとおりである。

(裁判官 村木達夫 高橋雄一 佐々木次雄)

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